ソーシャル時代のコールセンターをめぐる考察

2013年8月4日

先日、「ソーシャル時代のコールセンター」について、
いろいろと考えさせられる機会があった。
このテーマについて講演する機会があり、
当初は、セミナー全体の主旨を踏まえて取り急ぎテーマを設定したものの、
いざ、プレゼン資料を作成する段階になると、
「ソーシャル時代のコールセンターってなんだろう?」という
いわば本末転倒の疑問が、フツフツと頭をもたげてきたからだ。
そんな最中、7月31日の日本経済新聞(朝刊)で、
渋谷に、iPadでつながる「ログバー」が開業したという記事が掲載された。
なんでも、入店時に「iPadミニ」が配られ、
専用画面で名前やパスワードを入力すると、
店のスタッフや他の客の投稿が閲覧できるほか、
オリジナルカクテルをオーダーしたり
店内にいる人々とのやりとりを楽しんだりできるらしい。
・・・するとこれは、「ソーシャル時代のバー」なのか?
ソーシャル時代のコールセンターのことで
「?」がいっぱいの私の頭はそんな具合に回転し続ける。
しかし、単にソーシャルメディアが活用できれば
「ソーシャル時代の〇〇」というのは、あまりにも安直に過ぎる。
第一、店内にいる客全員が実際に投稿するとは限らないし、
見知らぬ人に声を掛けられて不愉快な思いをする客もいるだろう。
ソーシャル時代のコールセンターに話を戻すと、
こちらも同様に、ソーシャルメディアに対応しているということが、
唯一無二の前提ではないだろう。
ソーシャルメディアには対応していないコールセンターであっても、
ソーシャル時代という環境下に置かれていることには違いないし、
そもそもソーシャルメディアは単なる道具立てに過ぎず、
重要なのはそれを活用して誰が何をするかにほかならないのだ。
それまでグルグル回っていた私の頭は、
セミナーのテーマであるソーシャル時代のコールセンターとは、
単にコールセンターでソーシャルメディアに対応することなく、
かつ、ソーシャル時代というからには、
自分が置かれた環境を、ひいては相手を慮ることを
セットで捉えてこそ意味があるというところに集約されていった。
では、どうしたものかと、つらつらと考える中で浮かび上がってきたのが、
コールセンターでの対応を通じてお客さまの満足を獲得することと、
収集したお客さまの声を企業活動に反映していくことの2点である。
いずれもコールセンターが以前から挑戦していることではあるが、
ソーシャルメディアの進展に伴い、
そこにいくばくかの変化が見られるのは確かだろう。
まず、前者については、例え入り口のメディアが電話であったとしても、
対応を通じたお客さまの満足・不満足の声が、
ネットクチコミとしてソーシャルメディア上で広がっていく可能性を踏まえ、
これまで以上に対応品質をブラッシュアップすると同時に、
商品・サービスにかかわる不満の種を早めに解決しておくことが必要だ。
こうした事態を意識して、最近では、従来からの顧客満足度調査に加えて、
NPS(ネット・プロモーター・スコア)を導入するセンターも目立ってきたし、
そもそも、ソーシャルメディアによるお客さまとのコミュニケーション自体が、
こうした活動を側面から支援することにつながると言えるだろう。
次に、後者については、すでに多くの企業がVOC活動の名のもとで、
コールセンターで収集したお客さまの声の社内への発信を担っており、
中にはVOC分析のための専門部署をセンター内に設けている企業もある。
しかし最近では、ソーシャルメディアの進展に伴い、
良いことも悪いことも含めて、ネット上には星の数ほどのVOCが存在する。
ビッグデータの時代と言われる中、
今後はこうした情報をコールセンターのVOCと合わせて分析することにより、
より深い洞察を行うことが求められていると言えるだろう。
さて、ソーシャルメディア時代のコールセンターをめぐる考察は、
以上のような、いわばソーシャルメディアの進展により、
コールセンターにはどのような変化が求められているのかに向かっていった。
そして、そうした変化にどうすれば対応できるかを突き詰めていくと、
そもそもソーシャルメディア対応をどの部門が担うかと合わせて、
コミュニケーションを介した顧客満足の獲得やVOC収集の鍵を握る、
コールセンターで働く人材の問題がクローズアップされてくる。
前者、すなわちソーシャルメディア対応部門については、
私の会社((株)アイ・エム・プレス)が
企業のコールセンターを対象に15年前から毎年、実施している調査によると、
ソーシャルメディア対応を担っているコールセンターは
過去3年間で徐々に増加しており、
直近の調査(調査時点:2012年)では10%に達している。
日本に先行する米国事情を見ても、
ソーシャルメディアによるコンタクトが増加するに伴い、
対応部門がコンタクトセンターに移行してきた経緯があることから、
日本においても今後は、非対面での大量のコンタクトへの対応に長けた、
コールセンター部門にこれを担わせる企業がますます増加していくと見られる。
一方、後者、すなわちコールセンターで働く人材について、
前出の調査結果を見てみると、調査開始以来継続して、
「人材教育」が「コールセンターの課題」の1位を占め、
しかもその比率は年々、増加傾向にある。
各コールセンターではこれまで、ITやアウトソーソングの活用、
あるいはKPIに基づくマネジメントの強化により、
一定の品質を維持しながらも効率をアップすることに努めてきたが、
最近では、KPIに基づくマネジメントのみに依存していたのでは、
スタッフのストレスの増大につながりかねないばかりか、
対応品質の改善にも限界があるとの声も聞かれるようになってきた。
こうした中、昨今では、スタッフのモチベーション向上策を拡充する、
あるいは、コアバリューやクレドを明確化し、
これを行動指針に落とし込んでいくといった動きが広がっており、
一部のリーディング・カンパニーでは、
こうした組織ぐるみでの取り組みをベースに、
スタッフへの権限委譲が模索されるようにもなってきた。
今日では、各社におけるWebサイト上のFAQなどの拡充や、
注文などシンプルな用件のインターネットへの移行により
コールセンターに寄せられる問い合わせが複雑化傾向にあることを考えると、
すべてをマニュアル化するというのは不可能に近く、
そうした観点からも、こうした価値観の共有をベースとした
現場への権限委譲は、重要性を増してくる考えられる。
つまり、ソーシャル時代のコールセンターには、
クチコミやVOC活動をテコに顧客のパワーを活用することが求められており、
そのためには、従業員のパワーを最大限に発揮させることが欠かせない。
換言すれば、従業員と顧客のパワーを最大限に活用することで、
企業・従業員・顧客がそれぞれの要求を満足させられる
win-win-winのコールセンターこそが、
ソーシャル時代に目指すべきコールセンター像なのではないか。
限られた文字数ではわかりにくい点があると思うが、
ソーシャル時代のコールセンターをめぐる私の考察は、
そんなところに帰結することになったのである。
※本文中に引用したコールセンター調査の出典は下記をご参照ください。
http://www.im-press.jp/books/cc13.html